K2シロップって聞いたことありますか?
新生児にとってとても大切なお薬です。
今回はK2シロップの必要性や飲ませ方についてお話ししていきます。
ビタミンK2の働きとビタミンK欠乏性出血症
ビタミンKは血液を固め、出血を止めるために必要な物質です。言い換えればビタミンKが不足すると出血しやすくなるということです。
ビタミンKは胎盤を通りにくいので生まれたばかりの赤ちゃんはビタミンKの備蓄がありません。また母乳中にもビタミンKはあまり含まれていないことから新生児はビタミンKが不足しやすいのです。
ビタミンKが不足するとビタミンK欠乏性出血症を起こします。注射や採血の後の止血困難などもありますが、こわいのは身体の中で起こる出血で主に2種類に分けられます。
- 新生児ビタミンK欠乏性出血症…生後7日まで、特に生後2〜4日目に起こることが多く、吐血や下血などの症状が見られます。新生児メレナとも呼ばれます。
- 乳児ビタミンK欠乏性出血症…生後3週間〜3ヶ月の発症が多く、8割以上が頭蓋内で出血するため嘔吐や痙攣などの症状が見られます。
特に頭蓋内出血は予後が悪く、予防が重要となります。胆道閉鎖症など胆道系の疾患があるとビタミンKの吸収障害が起き頭蓋内出血のリスクが高くなります。「うんちの色が薄いかな?」と感じたら母子手帳の便色カードで確認してください。肝胆道系疾患の早期発見が頭蓋内出血の予防につながります。
これが便色カードです。
市町村によって母子手帳のデザインは違いますが、このような便色カードは必ず入れるよう義務付けられています。
1〜3番のような便は色が薄く胆道閉鎖症などの可能性があるため、便がついたおむつを持って受診しましょう。
日本小児科学会は以下のように提言しています。
①肝胆道系疾患の早期発見のため、母子手帳の便カラーカードの意義を医療者は理解し、この活用方法を保護者に指導すること
②哺乳確立時、生後1週または産科退院時のいずれか早い時期、その後は生後3ヶ月まで週1回、ビタミンK2を投与すること
日本小児科学会
以前は出生後・生後1週・生後1ヶ月に各1回、K2シロップを投与する「3回法」が主流でしたが、日本小児科学会のこの提言があってから生後3ヶ月まで毎週投与する「3ヶ月法」を採用する病院が増えました。ちなみに1ヶ月健診の時点で人工乳が主体(おおむね半分以上)になっている赤ちゃんはそれ以降のK2シロップ投与を中止しても良いとされています。
3回法は病院で医療者が飲ませますが、3ヶ月法は毎週なので保護者が飲ませる必要があります。飲ませ方をしっかり確認しておきましょう。
K2シロップの飲ませ方
赤ちゃんの退院までに病院でK2シロップの飲ませ方を説明されると思うのでその方法に従ってください。
K2シロップを作成しているエーザイが出している飲ませ方はこちら。
エーザイはスプーンや哺乳瓶を使って飲ませる方法を紹介していますが、病院ではスポイトを使って飲ませる方法をおすすめしている所が多いと思います。スポイトは病院によってシロップと一緒にもらえる場合もあれば自分で購入しなければならない場合もあります。ドラッグストアやインターネットでも購入できます。
スポイトは洗いにくい&乾きにくく雑菌が繁殖しやすいのでなるべく使い捨てにして毎回新しいものを使いましょう。
スプーンや哺乳瓶で飲ませる場合は必ず消毒したものを使いましょう。
こんな時はどうしたらいい?
毎日飲ませていた
K2シロップを数日続けて飲んだからといって問題が起こったという報告はこれまでにありません。気づいた日から1週間毎にしましょう。
飲ませ忘れてしまった
気づいた時点で飲ませましょう。その後は飲ませた日から1週間毎にしましょう。なるべく飲ませ忘れがないようにカレンダーに書いておくなどして工夫しましょう。
吐いてしまった
飲んだ直後に半分以上吐いた時は赤ちゃんが落ち着いてからもう1包飲ませましょう。飲んでから少し経っていたり少量なら飲み直す必要はありません。
こぼしてしまった
新しいものを開けて飲ませましょう。
どの場合でもK2シロップが3ヶ月まで足りなくなった時は追加が必要かどうか病院に相談しましょう
まとめ
K2シロップは赤ちゃんにとってとても大切なものです。ビタミンK欠乏性出血症はとても珍しい病気ですが起こすと予後も悪く非常に怖い病気です。大切な赤ちゃんのためにK2シロップの必要性と飲ませ方を正しく理解して、3ヶ月しっかりと飲ませてあげましょう。
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