出産のときアソコって裂けるの?会陰切開って痛い?切らないためにできることを助産師が解説

出産

長い妊娠期間を経ていよいよ出産が近づいてくると、経膣分娩を予定しているお母さんにとって心配なのが「アソコが裂けるって聞いたけど本当?」「会陰切開って痛い?」「傷ができないようにするにはどうしたらいい?」というおしもの傷問題

そこで今回は、出産を控えた妊婦さんへ、また出産により傷ができた褥婦さんへ

  • 会陰裂傷と会陰切開の違い
  • どのような時に会陰切開をするのか
  • 裂傷や切開を避けるためにできること
  • 産後の傷の処置と早く治すためのセルフケア

などについてお話ししていきたいと思います。

会陰裂傷と会陰切開について

裂傷?切開?何が違うの?

まず分娩の時のおしもの傷の種類についてお話しします。

膣と肛門の間の皮膚のことを会陰と言います。分娩時、助産師は出来るだけ傷ができないよう会陰保護といって会陰を守るための介助を行います。また急激に赤ちゃんの頭が出てくると傷ができやすくなるため、赤ちゃんの頭が会陰を少しずつ伸ばしながら出てくるように調整しています。しかしどれほど気をつけていても傷ができてしまうこともありますし、母子の状態によっては会陰を切開して早く赤ちゃんを出してあげなければならないこともあります。

  • 赤ちゃんが出てくる時に自然に切れることを裂傷
  • 医療者が必要と判断した場合に剪刀(ハサミ)で切ることを会陰切開

と言います。

裂傷について

裂傷は傷のできた部位によって頸管裂傷・膣裂傷・会陰裂傷とに分けられます。

また会陰裂傷は傷の深さにより第1度から第4度までに分類されます。

病気がみえるvol.10産科
  • 第1度…会陰皮膚および膣粘膜のみに限局
  • 第2度…会陰の皮膚だけでなく筋層の裂傷を伴う
  • 第3度…肛門括約筋や膣直腸中隔の一部まで断裂
  • 第4度…肛門粘膜および直腸粘膜まで裂傷がおよぶ

裂傷や切開の頻度は初産婦さんで8割程度、経産婦さんで6割程度です。多くは2度までの裂傷で3度と4度は数%程度です。経産婦さんは初産婦さんに比べ会陰の伸展が良いので、傷ができなかったりできても浅く済むことが多いのです。

傷ができたときの治療

1度と2度の裂傷、また会陰切開による傷は胎盤が出た後に局所麻酔をしてから吸収糸という溶ける糸で縫合します。1度の裂傷で数ミリ程度の浅く小さい傷は縫わずに自然治癒を待つこともあります。

3度と4度ももちろん縫合しますが、傷が肛門と近かったり繋がったりしているので細菌感染を起こしたり肛門括約筋(肛門を締める筋肉)が弱くなり便秘や便失禁が起こるリスクが高くなります。そこで多くの病院では細菌感染を予防するための抗菌薬と便を柔らかくするための緩下剤が処方されます。多くの場合は傷の回復とともに肛門括約筋の機能も回復していきます。

3度以上の裂傷はきちんと縫合されていても感染によって直腸膣瘻や直腸会陰瘻(直腸と膣の間または直腸と会陰の間に穴があき繋がった状態)ができることもあります。その場合は抗菌薬を投与して炎症と傷がしっかり治ってから数ヶ月後に再手術を行います。

会陰切開ってどんな時にするの?麻酔はする?

会陰切開の適応

会陰切開はどのような時に行われるのでしょうか。厳密な適応は病院や医療者の考え方により変わってきますが、基本的には分娩の進行がスムーズでないときや会陰の伸展(伸び具合)が悪く裂傷ができそうなときに行われます。

赤ちゃんが出てくるのに時間がかかっても母子ともに元気なら切開せずに会陰が十分伸びて自然に赤ちゃんが出てくるのを待ちますが、例えば赤ちゃんの心拍が下がっているなど早く赤ちゃんを出す必要がある場合は会陰切開を行います。

また会陰が硬くて伸びが悪かったり赤ちゃんの推定体重が大きいなど頭や肩幅が大きいことが予測される場合は裂傷を避けるために会陰切開を行います。自然に避けた傷より剪刀で切った傷の方が断面がきれいなので縫いやすく治りも早いからです。ちなみに切開の傷は裂傷の深さでいうと第2度に相当します。

会陰切開の方法

会陰切開は膣から赤ちゃんの頭が見えるくらいまで降りてきてから行います。膣を時計のようにみて7-8時または4-5時方向に2-3cm程度切ることが多いです。また場合によっては6時方向(正中切開)であったり、7-8時方向と4-5時方向の2箇所(両側切開)を切ることもありますが両側切開はごく稀です。

会陰切開を行う際は基本的にご本人へ切ることを伝えてから行いますが「怖いから言わずに切って欲しい」という方は事前にバースプランに書いておくと良いでしょう。状況にもよりますが注射による局所麻酔を打ってから切開する病院が多いと思います。麻酔の有無に関わらず「陣痛の方が強くて切られる痛みは感じなかった」という方が多いので極度に恐れないようにしましょう。

会陰切開は医師にしか行えない医療行為なので助産院や院内助産など助産師しかお産に立ち会わない施設では基本的に行われません。縫合は助産師も行えるので助産院であれば小さな裂傷の縫合は助産師が行う場合もありますし、大きな傷であれば提携している病院の医師が縫合のみ行うという施設もあるでしょう。

傷を作らないために自分でできること

傷ができるのは仕方のない部分もありますが、できれば傷をつくりたくないという方も多いでしょう。そこで傷をつくらないために産婦さん自身ができることをいくつかご紹介します。

妊娠中から会陰をやわらかくしておこう!

会陰がやわらかく伸びが良ければ切れにくくなります。お産に向けて妊娠中から会陰をやわらかくする方法としてオイルマッサージとタオル玉が効果的です。また会陰や周囲の筋肉をやわらかくほぐしておくことで37週以降の健診で毎回行われる内診の痛みも和らげることができます。

これらを行なえば必ず傷ができないというものではありませんが、お産に向けて良い効果が期待できることはやっておきたい!という方は是非試してみてください。

オイルマッサージ

マッサージに使用するオイル

マッサージに使用するオイルは添加物の少ない100%天然成分のオーガニックオイルがおすすめです。植物性であればホホバオイルやオリーブオイル、ココナッツオイルなど様々な種類があります。動物性なら馬油がおすすめです。馬油は赤ちゃんが口にしても問題ないため乳頭マッサージなどにも使用できます。

マッサージ前の準備

初めてマッサージを行うときは使用前にオイルのパッチテストを行いましょう。小さく切ったコットンにオイルを染み込ませて腕などに貼り、しばらく置いても赤みやかゆみが出ないことを確認してください。

マッサージは妊娠34週以降に開始します。安静の指示が出ている場合やお腹が張るときはやめておきましょう。また外陰部に静脈瘤がある方は医師に相談しましょう。

爪は短く切り手指も会陰も清潔にした状態で行います。入浴中や入浴後が身体も温まり会陰も柔らかくなっているのでおすすめです。

マッサージの方法

  1. 膝立ちの姿勢、または立った状態で片足を踏み台などに乗せた姿勢で行います(転倒に注意⚠︎)
  2. 人差し指と中指、または中指と薬指にオイルをつけ会陰をU字やくるくると円を描くように強めの力で5-10分程度マッサージします。
  3. 会陰のオイルは洗い流したり拭き取ったりする必要はありません。ショーツが汚れないようおりものシートやナプキンを使用しましょう。

指を挿入する方法もありますが、膣を傷つけたり炎症を起こしたりする可能性もあるのであまりおすすめしません。まずは週2-3回程度から始め、37週以降は毎日行いましょう。

会陰に直接触れることに抵抗がある場合はオイルパックも効果的です。コットンにオイルをしっかりと染み込ませて会陰にあて、その上からおりものシートやナプキンをつけたショーツを穿いて過ごします。こちらもお風呂上がりがおすすめです。不快感がなければ翌朝まで一晩置いておくと良いでしょう。

タオル玉

タオル玉って何?という方が多いでしょうが、その名の通りタオルで作った玉のことです。薄手のフェイスタオルを真ん中でふんわりと一つ結びます。椅子やベッドに座りタオル玉を膣に当てて体を小さく揺すります。時間は数分でOK。こちらは37週以降で開始しましょう。陣痛中に行うとお産の進みを良くする効果もありますよ。

お産の時は助産師や医師の声を聞こう!

赤ちゃんが急激に出てきてしまったり変なところに力が入ってしまっているとおしもが切れやすくなります。助産師や医師は赤ちゃんが少しずつ出てこられるように娩出力(赤ちゃんが出てくるときの力)を調整するよう産婦さんへ声かけを行います。「長くいきんで」「短くいきんで」「力を抜いて」「息を吐いて」など色々言われるかもしれませんし『痛くてそれどころじゃねーよ!』という気持ちになるかもしれませんが言う通りにしていただければ防げる傷もあるかもしれません。是非医療者の声に耳を傾けてみてください。

傷ができてしまった時のセルフケア

努力はしたけど傷ができてしまった!ということもあるでしょうが、母子ともに元気で出産を終えることが一番です。あまり深刻に考えないようにしましょう。

とは言っても傷があると座るのも痛いし、痛みが強ければ赤ちゃんのお世話が思うようにできないこともあるかもしれません。多くの病院では産後薬として痛み止めが処方されますが痛み止めが出なかったり、痛み止めを飲んだけど次の内服時間までに効果が切れてきたという場合は我慢せず医療者に伝えましょう。それでも痛くて耐えられない!というときは創部離開や血腫などの可能性もあるので診察してもらいましょう。

おしもの傷の管理方法

  • まずは感染などを起こさないよう清潔に保つことが一番です。シャワーで優しく洗いトイレの後はビデボトル等で流しましょう。病院のトイレのウォシュレットは刺激が強いですし多くの人が使用しており清潔とは言えないため使用を控えましょう。
  • 痛くて座るのが辛い時は円座を使いましょう。退院後であればドーナツ型のクッションを使用したり筒状に丸めたバスタオルを円形にしたものでも代用できます。
  • 十分な栄養をとりましょう。産後は体の回復や母乳をつくるためにも多くの栄養が必要です。バランスよく三食しっかり食べるようにしましょう。
  • こまめに休息をとりましょう。約3時間毎の授乳や搾乳、オムツ交換や抱っこなど休む暇がないかもしれませんが、赤ちゃんが寝ているほんの少しの間でも横になり体を休めるようにしましょう。赤ちゃんがあまりにも泣いて全く休めない!という時は限界を感じる前に助産師に相談してください。そのための助産師です。赤ちゃんの上手なあやし方や寝かしつけ方のアドバイスをくれたり次の授乳までの間預かるなど対応してくれるでしょう。

まとめ

おしもの傷はできれば避けたいというお母さんが多いはず。予防のためにまずは自分でできることから始めてみましょう。安全な出産のためには会陰切開が必要となることもあります。麻酔してもらえることが多いですし「切られる痛みは感じなかった」というお母さんが多いので極度に恐れる必要はありません。傷ができてしまった時は適切にセルフケアを行い、困ったことがあれば我慢せず医療者へ伝えるようにしましょう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました